朝8時、私たちはこれから東チベット最初の町「康定(カンディン)」に向かうため、成都新南門バスターミナルに向かいました。
成都からの距離は約350キロ。時間にして約6時間の道のりです。
途中にそびえる「二郎山」は、かつてチベットが国だった頃は国境として機能していましたが、中国四川省の一部となった今はトンネルが開通し、ものの数分で素通り。
そんな歴史の流れにも思いを馳せながら、康定に向かいたいと思います。
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■目次
みぞれ混じりの成都の町を歩き、バスターミナルへ向かう
この時期の成都は夜明けが遅く、午前8時でもまだ薄暗いのです。そして時折みぞれ混じりの雪が降り注ぐ空模様。
気温は2℃。
これから向かうチベットに比べたら全然暖かいほうだと思いますが、普段タイのバンコクで暮らしている私たちにとっては、それでもかなり寒い・・。
鼻水を垂らしながら、徒歩5分ほどにあるバスターミナルへ向かいます。
まずはお菓子や水などを売店で購入。その後しばらくベンチに座って待ち、発車20分前の8時40分。
私たちが乗る予定である「康定・9:00」の文字が電光掲示板に点灯。
自動改札機が設置されていて、チケットの表面を読み取ると扉が開きます。
さあ、いざチベット!
と、私たちが乗る「康定」行きのバスを探します。
案内板には20番線から発車すると書かれていたので、そちらへ向かいます。
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9:00発「康定行き」のバスは新型の豪華車両!
私は出発前の段階で、他の方が書いたブログから情報収集していました。しかしそのほとんどが旅行記で、情報系のブログには出会うことができず、どんなバスで移動することになるのか事前には分からず。
「きっと小さなボロバスで、きつい座席で移動するんだろうな・・・」
これが、最初私が思っていた、東チベットへのバス移動のイメージ。
それが嬉しい誤算でして・・・
20番線に停車中のバスは、なんと新型車両の大型車!
周りのバスは白にグリーンの塗装なのに、このバスだけ高級感のある「黒塗り」。1台だけ異色を放っています。
最近投入された新型車だそうで、景色がよく見えるハイデッカー、広々した2:1シート、低振動・低騒音対策の高級車。
安いバスとの差額はたった300円程度なので、これはかなりお得感があります。
間違いなく「康定」と書いてありますね!
中国のバスは行き先がフロントに書いてあるので、それを見ながらバスを探すことになります。
リクライニングも結構深く倒れるので、6時間の道中はかなり快適!足元も広いので、最大まで倒しても後ろの人が狭くなりません。
定刻の9時、運転手が乗り込んできました。体格がいい角刈りヘアの若い運ちゃんです。なかなかいかつい風貌で、一見すると怖い人・・(笑)
(運転は終始ジェントルで、制限速度をきっちり守って、無理な追い越しも1度もしませんでした。見かけで判断してはダメですよ(笑)でもクラクションはよく鳴らしていましたが・・中国では普通。)
ここで公安官が車内に乗り込んできて、乗車券とIDカード(外国人はパスポート)のチェック。
私たちは特に何も言われず、聞かれず、すぐにチェックが終わりましたが、2名のチベット人?(服装から判断)の乗客が、公安官に怒鳴られながらバスを降ろされてしまいました。身分証に何か不備があったのでしょうか・・。
その2名を残したままバスは発車。この騒動で20分ほど発車が遅れ、時刻は9時20分。
バスは康定に向けてゆっくり発車しました。
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高速が延伸されて快適ドライブ
新南門を発車したバスは、しばらく成都の街中を走行します。
窓辺には、営業時間前でシャッターが降りた、美味しそうな食堂がたくさん!
年末の成都の朝はやや渋滞気味ですが、それなりにスムーズに大通りに抜けて行きます。
成都の町とは一旦お別れだなあ・・。
次に戻ってくるのは、年明けの1週間後か。
前日食べた「陳麻婆豆腐」が大ヒットしたので、もうそのことで頭がいっぱいの私(笑)成都に戻ってきたら必ず再訪するぞ!
そんなことを考えているうちに、バスは高速の料金所に差し掛かります。
ここからしばらくの区間は高速道路を走行、時速100キロをキープしながら、淡々と西に向かって走り続けます。
11:31分、成都を出発してから2時間11分で「雅安」の町に到着。
一旦高速を降り、営業所のようなところで5分ほど運転手さんが降りて行きます。そのまますぐに発車。
バスは高速道路に戻り、再び西に向かって走り続けます。
11:51分。1回目の休憩所でもあるパーキングエリアに到着。
他のブログで見た情報だと、扉がない「ニーハオトイレ」の休憩だったとありましたが、日本のパーキングと変わらないくらい、綺麗なところでした!
聞いたら、2018年10月に完成したばかりの新しい施設だそうで・・。
うちの怖い嫁さんが降りてきます。
ちなみにこのピンクのジャケットが、2年前に昆明で買った中国製の防寒具。約3000円と爆安なのに性能・耐久性抜群!
この辺りからみぞれが雪に変わり、外気はー3℃を指しています。どうりで耳たぶが痛いわけだ!
新しいパーキングエリアについての記事はこちら!
約30分の休憩を挟んで、バスは再び走り始めます。
破られた国境・二郎山をバスで越える
こんな書き方をすると、某国人からはお叱りがあるかもしれませんが・・。
チベットが国として存在していた頃、国境として機能していた「二郎山」は、ここからすぐそこです。
詳しい歴史についてはここでは触れませんが、ある日その国境は破られ、現在は中国四川省の一部。
渓流を左手に見ながら、険しい山間部を貫く高速道路。
雪はさらに強まり「これからチベットに向かう」という旅情を掻き立てます。
バスはいくつもトンネルをくぐり抜けます。
この道路は「雅康高速道路」と言って、雅安から康定までの約180キロを結ぶ予定。現在は先ほど述べた「二郎山」を越えたところにある「泸定」という町まで開通していて、そこから先の区間は工事中。
バスは成都から雅安までを既存の高速を走り、そこから雅康高速に乗り換えるというわけです。
全区間開通した際の所要時間は、現在の6時間から4時間半に短縮されるとのこと。
窓の外に見えてきたのは、雪に閉ざされた「二郎山」。その下にはトンネル「二郎山隧道」が貫通しています。
トンネルの入り口には中国語のスローガンとともに、軍人の銅像が置かれています。
うーむ。中国の「今」を感じた瞬間です。よくも悪くも。
私がそんなことに思いを馳せている間も、バスは速度を緩めることなく、薄暗いトンネルを走り続けます。
全長約15キロもある長いトンネルを抜けると、そこはかつてチベットだった大地。
これがチベット側にある二郎山隧道のゲート。
高速道路は現時点ではここまで。
あとは旧来の山道を康定に向かって走ります。
いかにも中国的なスローガンが、これ見よがしに掲示されています。
その上部には、チベット語の翻訳もついているのが興味深い。
インターの名称は中国語・チベット語併記。
さあ、いよいよ東チベット旅の始まりですよ!
おっと、その前に公安のチェックが。
全員バスを降りるように促されます。窓口に並んでパスポートとバスのチケットを出すのですが・・。
公安官が何か中国語で怒鳴っています。
「・・・・・」
全く理解できず・・後ろにいる別の公安官と、パスポートを指差しながら何か相談している様子。
「まずいなあ・・」
特にやましいことは何もありません。
しかし私が危惧したのは、東チベットは情勢によって、ある日突然外国人の入域が禁じられることもあると、どなたかのブログに書いてあったのを見たから。
ここで引き返すことになるのか・・?
と思っていたところ、バスの運ちゃんが書類のバインダーを見せながら公安官と何か話しています。
パスポートのページを指差して、何か激しい口調で言っている模様。
運ちゃんは「バスに戻ってろ!」と、バスの乗降口を指差しています。今の時点ではなす術がないので、あとは運ちゃんに任せることにして、バスに戻る私たち。
数分後、パスポートを持ってバスに戻ってきた運ちゃん。
話し合いの内容は何だったのか、結局分かりませんでしたが、運ちゃんの表情から分かったのは「そのまま康定に行ける」ということ。
終始怖そうな雰囲気と顔だったのに、ふいに笑顔になって白い歯が見えた時は「おおッ、いい人だ!」と。
バスは何事もなかったかのように走り出しました。
車窓からは、絶賛工事中の高速、そして旧道に続く急勾配の急カーブ。
「おお!今からこの道を降りて行くのか!」
康定に向けてラストスパート
時刻は13:16分。
成都を発車してから約4時間が経過しました。
高速を降りてからは旧道に入り、泸定の町を通過します。
途中にはエメラルドに光るダム湖が見えたり、太い送電線が見えたり。
中国政府は康定エリアの開発に力を入れているのでしょう。
便利になることは時代の流れ。経済活動をする上で自然なことなのでしょうが、現地のチベット人たちは、どのようにその状況を眺めているのでしょうか。
車窓からは新しく建設中の赤い橋が見えます。
怖い・・・。いずれ将来的には、みんなこの橋を渡ることになるのでしょうか。
ところどころ岩を切り開いた箇所もあり、工事の難関さを伺わせます。
滝が見えたり、渓流が見えたり、なかなかの景色のところを通過します。なので飽きることはありませんでした。
そして、定刻よりも1時間早い14:20分。
バスは終点・康定バスターミナルに到着しました!
成都からの所要時間はちょうど5時間。
その日、乗車した便によって前後するでしょうが、事前に聞いていたのは所用6時間なので、なんと1時間も短縮されたということになります。
運転も、別に飛ばしていたわけではなかったので、謎です・・(笑)
最後に、バスの運ちゃんから「康定オススメの麺屋」を教えてもらいました!
滞在中に訪れて、本当に美味しかったので後日改めて紹介したいと思います!
まとめ
成都からわずか5時間で康定の町に到着!
所要時間は着実に短縮され、ますます便利になっていく東チベット。それと同時に、今後は「漢族(中国人)」が大量に流れ込むのではないかという憶測。
便利になることと引き換えに失われて行くもの。
これは中国・東チベットに限らず、世界中どこでも同じことが起きています。
「康定」はすでに中国によって開発されていますが、このさらに奥にある町や村には、古き良き「チベット」の雰囲気が残っている場所もまだまだあります。
なので、興味がある人はできるだけ早めに訪れることをオススメします。
これから康定、そして東チベットを訪れる予定の人の参考になれば幸いです。
私は6月の頭に康定、丹巴、日隆鎮などに泊まって素晴らしい景色を楽しんできました。朝、昼、晩の食事は時に美味しく、時に不味くという感じでしたが、ホテル前や道端で売っているビワ、サクランボ、干しブドウやヤクの乳のキャンディ?菓子?はとても美味しかったです。乾燥した果物は国内に持ち込めても、生のフルーツを持ち込めないのが残念でした。
この時季、この地域は曇りや雨が多いということでしたが、全日程(5日)すべてがとても良い天気でミニヤコンガ、四姑娘山等など素晴らしい景色を堪能できました。
中国の方は少々うるさいですが、人なつこくて、親切ですね。日本人はどちらかと言えば、他人との関わりありを避けようとする傾向ですが中国人は逆、どんどん声をかけてきますよね。折多山の展望台でも中国人民解放軍のお兄さんとカタコト英語で話をし、名前こそいかめしいが普通の若者でした。
コメントありがとうございます!
6月の東チベットは、緑が濃くなるシーズンなのでとても素敵ですね。確かに雨が多くなる季節ですが、好天に恵まれたとのことで羨ましい限りです。
中国の方がうるさいのは、ある意味「文化」なのだと感じています。人口も多く、順番という概念が今まであまりなかったため、大きい声でアピールしないと自分の番が来ないというのは事実ですね。
なので、それを「にぎやか」と捉えてしまえば気にならなくなりました。
四川省の人々は、中国の中でも特に親切で、比較的のんびりしている方が多いと思います。
機会があればまた訪れたいエリアです。
今年5月末から6月にかけて成都発で沪定橋、康定、南へ下って西昌、昆明と回る計画です。
良い情報ありがたいです。 沪定橋を見たいのでいったん途中下車になりますが、沪定から康定へはバスがあるのでしょうか。
コメントありがとうございます!
6月だと雨の日もあるかと思いますが、東チベットエリアも気温も上がり、過ごしやすいですね。
沪定から康定へのバスはすみませんが把握していません。
下のサイトは、中国の中・長距離バスの路線と時刻を検索できるサイトです。この旅を計画する際にお世話になりました。
役に立つかはわかりませんが、一応貼っておきます。
https://www.checi.cn/
距離が短い場合、空席があれば途中乗車できるかも知れませんが、確実ではありません。(途中から乗ってきた乗客が何名かいました。)
楽しい旅になるといいですね。