タイに限らず、日本を出て海外旅行するということは、その訪問国の習慣や文化に触れることになります。中でも多くの日本人が苦手としている外国の習慣、それは「サービス料」「チップ」ではないでしょうか。
日本だとあまり馴染みがなく、サービス料は価格に含まれているのが当然という考えを持っている人が多いと思います。いざチップを渡すタイミングングになると「いくら渡せばいいのだろう?」「どうやって渡そうかな?」などと戸惑ってしまうのではないでしょうか。
実際にバンコクのレストランなどでは、お会計の仕方を見るだけで「ああ、この人は日本人かな?」と分かってしまう場面が多々あります。
今回は、タイでの「スマートな会計の方法」と、「チップの上手な渡し方」について紹介したいと思います。
タイでのチップに対する概念
まずはじめに「タイでチップに対する概念はどのようなものか」ということからお伝えしたいと思います。
結論から言いますと、欧米諸国のような「制度」とは違い「お気持ち」や「施し」の意味合いが強く、払う払わないは自由意志によるもの。
階級社会でもあるタイならではの考え方と、仏教の教え「徳を積む」という考え方から来る独自のシステムとも言って良いと思います。
なので、先進国からの旅行者である日本人は、タイ全体で見ると「お金持ち」に当たるため、サービス側からはそれなりのチップ(施し)を期待されるわけです。
とは言え、意味もなく多く渡せば良いというものでもありませんし、マッサージ店やゴルフ場など業態によっては「制度」となっているケースもあるので、慣れていないと戸惑うことでしょう。
そんな旅行者の方が困らないように、それぞれのケースごとに説明していきますね。
スポンサーリンク
タイでスマートな支払いの方法とチップの相場
高級レストランの場合
ホテル内や高級に類するレストランでのお会計は、基本的にテーブルチェックとなります。
従業員が伝票を持ってくるまでに少し時間がかかることが多いので、「さて出よう」となる10分前くらいには従業員を呼んだ方が良いでしょう。呼び方は、テーブル担当の従業員か、いない場合は手が空いている従業員と目を合わせて、「チェッ(ク) ビン」「チェックプリーズ」などというか、人差し指でテーブルを指しながらくるくる回すだけでもOKです。
ポイントは、「目を合わせること」「他のテーブルをサービス中の従業員を呼ばない」こと。
タイの従業員は基本的にのんびりしているので、きちんと目を合わせて意思表示しないと、自分が呼ばれていることにすら気づかないことが多いからです。また、他のテーブルをサービス中の従業員はそのことしか頭にないので、終わった頃には忘れていることが多いです。
こんな具合で、従業員の反応は日本のそれと比べたら良くありません。そもそも仕事に対する感覚が日本とは違うため、呼んでもなかなか来ないかも知れません。
そんな時、日本人がよくやりがちなパターンとして、「大声で呼ぶ」「手をパンパン叩いて呼ぶ」「バックヤードに従業員を呼びに行く」などをたまに見かけます。しかしタイではこれらの行為は「上品ではない」とされています。
確かに「客にイライラさせる方が悪いんだ」という日本式の考えは、サービス論の観点から見れば正しいのですが、ここは時間がゆっくり流れる南国タイ。焦らずに待ちましょう。
伝票を持ってきたら、内容をチェックしましょう。たまに頼んでいないものが記載されたり、金額の計算が間違っている事もあります。おそらく悪意はないと思いますが、これらのミスはよくありがちなので注意しましょう。
合計金額には、サービス料として10%、そしてVAT(消費税)として7%加算されていることがあります。これは店によってまちまちで、大抵伝票にその旨が記載されています。サービス料が加算されている場合は基本的にチップは不要とされていますが、お釣りのコインはお気持ち程度に置いていくのがスマートです。
また、合計金額にサービス料が加算されていない場合は、支払額や人数によって100B前後をお釣りから置いていく程度で良いと思います。
チップはあくまでもお気持ちなので金額に決まりはありませんが、私の場合ですと支払額と人数が多い場合は100Bくらい、少ない場合は60〜100Bくらい置いて帰ります。ガイドブックの多くには10%程度と記載されていることが多いですが、そこまで多く渡さなくてもいいのでは?と私は思います。
そして忘れがちなのがテーブル担当への直チップ。伝票バインダーに残したチップは、月に一度全従業員で山分けするためのチップです。テーブルにサービスしてくれた担当がいる場合は、個別に100Bくらい渡すのが良いですね。
1〜2人程度の少人数での食事や、金額が1000B程度だった時、テーブル担当が特に専属ではなかった場合は特に渡さなくても良いです。
ポイントは、チップは「お釣り」の中から残すことです。日本人がよくやってしまうのが、きっちり細かく払おうとして財布の中のコインをジャラジャラあさるパターンですが、これは高級店に限らずタイでは恥ずかしいのでやめたほうが良いかと思います。
コインはあらかじめ仕分けした上で、コンビニで使うのがベスト。BTS電車のチケット購入でも必要です。
友人同士の旅行だと、食事代は「割り勘」にする方がほとんどかと思います。タイの場合、お会計時にその場で計算して細かく割るのは見栄え的にも良しとされない文化があります。
財布の中身が他人に見えてしまうので、防犯上の観点からもオススメできません。
誰かが一旦全額立て替えて払った上で、店を出た後やホテルに戻ってから割るのがスマートです。
中級レストラン、チェーン店の場合
ショッピングモール内のレストランや、高級ではないけど、食堂ではないカジュアルなレストランを指します。これも基本はテーブルチェックが多いですが、チェーン店の場合日本と同様、伝票を自分でカウンターに持って行く場合もあります。
会計にサービス料が含まれていない場合は、お釣りの中から20B札1〜2枚とコイン程度を置いていきましょう。高級店同様、きっちり細かく払うのではなく、高額紙幣で払い、お釣りをもらうようにするとスマートです。
タイのタクシーや、個人商店・おみやげ屋台などでは「お釣りがない」と言われることが多々あります。なので1000B紙幣は中級店以上を利用するときになるべく使い、100B・20B紙幣をたくさん用意しておくと後々便利です。
町の食堂、屋台の場合
食堂の場合は、食べ終わったら従業員を呼びテーブルで会計をします。伝票はタイ語で書かれているのでたいていは読めないと思いますが、品数と計算くらいはチェックしましょう。
基本的にチップは不要ですが、トレーに入れてお釣りを返された場合は端数のコインは残していくのがスマートです。お釣りが手渡しの場合はコインも含めて全額受け取って大丈夫です。
1000B札で支払うとお釣りがない場合もありますので、事前に100B札を多く用意しておくと良いです。
特別なことを頼んだり、食べ物・飲み物をこぼすなどしてテーブルを汚した場合は、20B程度置いて帰りましょう。
屋台の場合も同様です。持ち帰りの場合は、商品と代金交換になります。こちらは、コインも使いきっちり細かく払っても問題ありません。
ホテルチェックイン時と滞在中
チェックインをした後、部屋まで荷物を運んでくれたポーターに20B〜100B程度渡します。この相場はホテルのランクに直結しています。3スターの中級までのホテルなら20B〜40B程度で良いでしょう。5スターの高級ホテルですと100B程度が良いと思います。これは、滞在中のサービスの良し悪しにも影響してくる可能性もありますので、気持ち良く渡すのがポイント。
また連泊の場合、翌日の外出中はスタッフが室内清掃に入ります。20B〜100B程度枕元に置いておきましょう。これもホテルのランクによりますし、部屋を汚した場合は少し多めに置いておくのがベター。
ここでチップを置き忘れると、掃除してくれないだけなら良いのですが、ひどい時だと持ち物がなくなる、冷蔵庫のミニバーを勝手に飲まれるなどの嫌がらせが発生することも。
これらのトラブルをフロントに訴えても、対処してくれないことが殆どです。不当なミニバー代の支払いを拒否しても、チェックアウトする際に、預けてあるデポジットやクレジットカードから引き落とされるだけなので、結局自分で払うことになります。
タイはまだまだ途上国なので、たまにこのようなことが起こります。注意してくださいね。
タクシーの場合
基本的にチップは不要です。1000B札はお釣りがない場合が多いので、100B札と20B札を用意してから乗りましょう。20B単位で支払い、お釣りの端数コインは置いて降りるのがスマートです。また、手持ちのコインがある場合は、細かく払っても問題ありませんが、あくまでもコインの使用は端数を払うだけにしましょう。
貸切交渉でチャーターした場合は、最後の代金支払い時に100B程度のチップを上乗せして支払うことが多いです。ただし運転や態度が悪かった時は渡さなくても大丈夫です。
スポンサーリンク
ツアー利用の場合
貸切ツアーの場合、運転手とガイドと2名いますので、グループ全体で300〜500B程度渡せば良いでしょう。その際「後で分けてね」という意思が伝わるようにしましょう。金額はもちろん満足度にもよります。
貸切ではないツアー、最初からチップ込みのツアーの場合は必要ありませんが、満足度によっては個人的に100B程度渡せば良いでしょう。
マッサージ店の場合
代金はマッサージ終了後に受付で支払う場合がほとんどです。代金とは別に、施術師に50〜100B程度のチップを渡しましょう。相場は店のランクや地域によっても違いますが、スクンビット通り、シーロム近辺などでは1時間100B程度の金額が相場のようです。
あくまでもチップは気持ちなのですが、マッサージ師の給料は、チップをもらえること前提で安く設定されています。このため渡す額が少なすぎると少し失礼に当たります。
マッサージのチップは、もし施術師が下手だったとしてもゼロというわけにはいきません。ただし、時間を短くされたとか、途中ふざけて真面目にやってくれなかったなどの場合は、その旨を伝えた上でチップは渡さなくても大丈夫です。
高級サロンやスパの場合は100〜200Bほど渡すと良いと思いますが、これは施術のコースにもよりますね。
ゴルフ場の場合
プレー終了後に、キャディーさんにチップを渡す決まりです。300〜500B程度で、ゴルフ場の格式や、サービスによっても多少変わります。私が初めてタイに来た2011年ごろと比較した場合、タイの物価も上がっているためチップの相場も少し上がったようです。
キャディーの仕事があまり良くなかった場合でも、ゼロというわけにはいきません。
コンビニの場合
チップは一切不要です。たまったコインはコンビニで遠慮なく使いましょう!分かりやすいように、あらかじめコインを分けておくのがベター。ただし、レジが混んでいる場合はコインでの支払いは嫌がられるので、紙幣で支払った方がスマートです。
また、日本人がやりがちな「難しい支払い方」はタイ人従業員には理解されません。例えば、「297Bに対して302B払い、お釣りを5Bもらう」ような支払い方は日本独特の考え方です。
相手が混乱して、レジ打ちミスや計算ミスの原因になるので、やめたほうが無難です。
BTS、MRTなど切符購入の場合
BTSの場合、自動券売機がコインのみ対応の機種があります。たまったコインはどんどん使いましょう!
支払いとチップのまとめ
- 飲食店のチップはお釣りの中から置いていく
- 支払いは誰かが一旦立て替えて、割り勘は店を出てから
- ホテルのチップは忘れずに
- あくまでも相場は相場。渡す金額は満足度によって
- 多く渡せば良いというものではない
ーーーーー
「チップ」は、タイに旅行に来て「気持ち良く過ごしたい」という自分の満足度を上げるための潤滑油になると考えてもらえればと思います。
日本人には馴染みのない「チップ」についてですが、この記事を読んでなんとなく分かってもらえましたか?
慣れていないと戸惑いがちですが、タイの場合欧米諸国とは違い「制度」ではないため、そこまで難しく考えなくても大丈夫です。サービスに対する「感謝の気持ち」が大事。世界3本指に入る先進国から来た日本人として、スマートに渡せるようになりたいですね!
コメントを残す